英語力アップに効果があるといわれる洋書多読。
本を読むだけという手軽さから、挑戦した経験のある人も多いと思います。
ところが、多くの人は数ページで挫折します。
ほとんどの場合、挫折の原因は、
- 本の選び方を間違えている
- 本の読み方を間違えている
この2つです。
この記事では、洋書多読で陥りがちなこの2つの失敗要因と、正しいやり方について解説しています。
失敗しない洋書の選び方
レベルに合った本を選ぶ
洋書選びでよくある失敗が、自分のレベルに合っていない本を選んでいるということ。
先に結論を言うと、多読成功のカギは「やさしい本をたくさん」読むことです。
洋書多読をしようと思ったときに、多くの人がまずイメージするのはペーパーバックではないでしょうか。
じつは、この思いこみが多読を失敗へと導く1つめの要因です。
どんなことでも、初心者はかんたんな基礎練からはじめて、少しずつ難易度を上げていくもの。
楽器でもスポーツでも勉強でも。
洋書多読もやさしい本からはじめるべきですが、私たちは学校で嫌というほど英語を勉強してきたので、自分が初心者であることに気づかないのです。
TOEICや英検の高いレベルに合格している人ならなおさらです。
学校の英語はルールブックと練習ドリルに過ぎず、洋書を読んだことがなければまだ仮免のような状態です。
授業とか受験勉強でたくさんリーディングしたのに、まだ初心者なんですか・・・。
ネイティブが触れている英語の量を考えると、まだまだひよっこです。
そこと比べるんですね。
洋書はネイティブの読みものですからね。
まずは、やさしい本からスタートして、少しずつレベルアップしていく必要があるのです。
では、具体的にどのような本を選べば良いかと言うと、辞書を使わなくても読めるようなレベルの本。
特におすすめなのは絵本です。
大人が絵本?と驚かれたかもしれませんね。
TOEICで高得点をとっている人だったら、自分は例外だと思うかもしれません。
でも、多読がはじめてなら、どんな人でもまずは絵本をおすすめします。
たとえばこちらの本は、このブログで多読のスタートにおすすめしているやさしい絵本です。1ページあたり1文か2文程度で、全部で32ページの本です。
Amazonでぜひサンプルを読んでみてください。冒頭を抜粋するとこんな感じです↓
This is a story about a monster.
『The Sad, Sad Monster』Dolores Costello(著)より抜粋
A very good monster.
But even though he was good, everyone was afraid of him.
もし「afraid」の意味が分からなかったとしても、怖がってるんだろうな、ということが絵を見ると分かります。
多読では、
- 最初は絵本などのやさしい本を選ぶこと
- やさしい本をジャバジャバ浴びるようにたくさん読むこと
が成功のカギになります。
やさしい本をたくさん読むと、考えなくても分かる単語や語句が増えていきます。
考えなくても分かるとはどういうことか、例をあげて説明しますね。
突然ですが、Thank you を知らない人はいませんよね。
外国人に何かをしてもらったら、自然に ”Thank you“ と言うと思います。
Thank you は、文法的には I thank you(私はあなたに感謝します)の I(私は)が省略された形です。
でも、命令文ではないのになぜ動詞が前にあるんだろう?なんて考えたりはしませんよね。
※英語では、カジュアルな表現で主語が省略されることがよくあります。
これは、Thank you が考えなくても分かるレベルになっているからです。
母国語のような感覚ですね。
絵を見ながら短い英文をたくさん読んでいると、Thank you のように、パッと見ただけで分かる語句のストックが増えていきます。
たとえば、このような短い英文やフレーズです。
- I like 〇〇〇.
- I bought 〇〇〇.
- I don’t know.
- What is this?
- Who is she?
- I’m hungry.
- Here you are.
やさしい本をたくさん読むことは、英語のフレーズやパターンを体に刷りこむ作業とも言えます。
子どもが言葉を覚えるときと同じです。
長く複雑な文では、解読するのに必死でこの刷りこみができません。
そして次のステージとして、このストックが増えると、少し長い文でも楽に読めるようになってきます。
たとえば、既に覚えている短文が複数くっついた文や、追加情報がくっついた文を見てもらうと分かりやすいと思います。
I don’t know + who is she?
↓
I don’t know who she is.
I bought an apple + 追加情報
I bought an apple at the new supermarket.
どんなに長い文でも、複雑な文でも、必ず基本の英文が隠れています。
何かがくっついたり、省略されたり、倒置がおきたりすることで、複雑に見えているだけです。
やさしい本からスタートして、すこしずつレベルを上げていくと、隠れている基本の英文が見破れるようになってきます。
このステップを踏まずに長い文と格闘すると、どこで区切っていいのやら、誰が何をした話なのやらさっぱり分からない、ということになってしまいます。
やさしい本でストックを増やして、それを武器にステージアップ。
手持ちの武器のレベルが上がれば、さらに上のステージへ。
このパターンを続けることで、無理なくレベルアップしていくことができます。
これが理想的な多読のしかたです。
つまり、多読初心者が選ぶべきは、ヘミングウェイやディケンズのペーパーバックではなく、文字の少ないやさしい本です。
ステップアップはゆっくり
次に、無理なくステップアップしていくための洋書の選び方をご提案します。
ゆっくり本のレベルを上げていくと、楽に力をつけていくことができます。
とは言え、レベルが少しずつ上がるように洋書を探してくるのは、自力では難しいですよね。
そこでご提案したいのが、
- レベル別読みものを利用する
- 本選びのガイドを利用する
この2つです。
レベル別読みもの(段階的にレベルを上げていけるように作られたシリーズ本)としては、
- Greaded Readers(英語学習者を対象としたレベル別読みもの)
- Leveled Readers(英語圏の子どもを対象としたレベル別読みもの)
があり、GR、LRと略されることもあります(以下、GR、LRと記載)。
GRのよいところは、英語学習者向けに作られているので、大人を対象としたストーリーである点。
LRのよいところは、英語らしい表現にふれられる、英語圏の文化がが分かる、という点でしょう。
GRもLRもレベル別読みものの総称で、各出版社から独自のGR、LRシリーズが出版されています。
- Penguin Readers
- Oxford Bookworms
- Macmillan Readers
- Cambridge English Readers
- I Can Read
- Oxford Reading Tree
- Springboard Connect
- Step into Reading
GR、LRシリーズは、自然にレベルアップできるので多読におすすめですが、各社からいろいろなシリーズが出版されているので選ぶのが難しいかもしれません。
いずれにしても大量の本を自分で探すのは難しいので、何かガイドをしてくれるものがあるといいでしょう。
本選びのガイドとしておすすめなのは、こちらの本です。
GR、LRシリーズを含め、おすすめの洋書がレベル別に紹介されているので、この本1冊あれば洋書選びに困ることはないでしょう。
効果的な多読のしかたについても、分かりやすく解説されています。
ただ、洋書を購入するとそれなりにコストがかかるので、このブログではもう一つの選択肢としてサブスクリプションサービスをご提案しています。
おすすめしているのは、洋書の品ぞろえ世界ナンバー1、Kindle のサブスクサービス Kindle Unlimited です。
このブログでは、本選びのガイドとして利用していただけるように、やさしい洋書をカテゴリ別、レベル別にたくさん紹介しています。
サブスクでの多読に興味のある方は、こちらをチェックしてくださいね。
失敗しない洋書の読み方
多読に失敗するもうひとつのよくある原因が、間違った読み方です。
結論を先に言うと、精読をすると失敗します。
精読と多読の違い
ここで、キーワードとなる「精読」について解説します。
精読は、単語の意味や文法、文の構造などを学びながら、1文1文をていねいに読む方法です。
学校の授業でやる英文解釈が、まさに精読です。
多読でこれをすると失敗します。
どういうことですか?
丁寧に読まないほうがいいんです。
???
多読と精読は目的が違うので、やり方も変える必要があります。
精読の目的は、英文の正確な意味や構造を理解すること。
多読の目的は、英語を大量にインプットして英文に慣れること。
読書法 | 目的 |
---|---|
精読 | 英文の正確な意味や構造を理解すること |
多読 | 英語を大量にインプットし、英文に慣れること |
多読の目的をよーく頭に入れておいてくださいね。
では、多読に適した読み方とはどういう読み方なのかを次にご説明します。
多読の理想的な読み方
多読に適した読み方とは、
このような読み方です。
今までの英語学習とはまったく違いますね。
では、それぞれ詳しく解説します。
ザックリ読みをする
多読では、1文1文を丁寧に読みこむのではなく、ストーリーをザックリ読むほうがよいのです。
辞書は使わず、分からないところは絵や文脈からサクッと推測するか、気にせず飛ばします。
内容が7割~8割理解できれば十分です。
木を見るのではなく、少し俯瞰して森を見るようなイメージです。
多少、単語や文が分からなくても、ストーリーを見失っていなければOK。
日本語のニュース記事や本を読むときに、かなり適当に読んでも内容を理解できますよね。
それと同じです。
ザックリ読みをすることでスピードも上がり、よりたくさんの英文にふれられます。
ではここで、ザックリ読みをしたほうがよい理由を例文を使って説明しますね。
なるべく客観的な視点で見ていただきたいので、あえて日本語の例文を用意しました(たまたま子ども部屋の棚にあった本です)。
「この本を読んで外国人が日本語の勉強をしている」と想定して読んでみてください。
「エジソン」の伝記(講談社/火の鳥伝記文庫)からの抜粋です。
ある日、列車がつよくゆれたはずみに、実験室のたなから黄りんのびんがおちてくだけてしまいました。
「いけない!」
とおもったときには、もう、白いけむりをあげてもえだしていました。黄りんは空気にふれると発火するのです。
ふみけそうとしても、たたきけそうとしても、きえるどころか、ぱあっともえひろがるばかり、エジソンはさけびました。
「火事だ! 火事だ!」
しゃしょうがかけつけ、手ばやく、バケツで水をかけてくれたので、火はきえました。
ありがたいことに、へやの内部に、すこしやけあとができただけでした。
エジソンが、働いていた列車の中でこっそり化学実験をしていて、火事を起こしてしまったシーンです。
この本を読んだ外国人が、もし100%の理解にこだわったらどうなるでしょうか。
おそらく分からない言葉はいくつかあると思います。
- はずみに
- 黄りん
- ぱあっと
- しゃしょう
- かけつけ
- 手ばやく
などでしょうか。
これを片っぱしから辞書で調べながら読んでいたらどうなるでしょう。
約250ページもある本なので、きっと疲れてギブアップしてしまうでしょう。
このくだりでは、エジソンが実験道具で火事を起こしたこと、無事に火が消えたことを読みとればいいわけです。
さらに俯瞰してストーリー全体から見ると、この一節は若い頃のエピソードを1つ紹介しているんだな、とサッとなでるように読むだけでじゅうぶんなパートです。
分かる言葉をひろってストーリーを楽しんでいるだけでも、たくさんの文に触れることができます。
疲れて読むのが嫌になってしまったら、もう二度と洋書を手に取ることはないかもしれません。
日本語の文章を見ると分かりやすいのですが、物語には分からなくてもまったく問題ない言葉がたくさん散りばめられています。
作家さんたちは日常生活では使わないような詩的な言葉やインパクトのある言葉を使ったり、言葉遊びを盛りこんだりします。
それらは映画の効果音のようなもので、理解できなくてもストーリーを追うのに何ら支障はありません。
和訳をしない
学校英語のなごりで、私たちは英語を見るとついつい和訳してしまいます。
でも、和訳しながら読むのは「精読」になります。
もう一度確認しますが、多読と精読では目的が違います。
読書法 | 目的 |
---|---|
精読 | 英文の正確な意味や構造を理解すること |
多読 | 英語を大量にインプットし、英文に慣れること |
精読は外国語の構造を学ぶのには役立ちますが、いつまでも精読していては英語を英語のまま理解する習慣がつきません。
また時間もかかるので、大量に読むことができません。
では、どうすれば和訳グセから脱却できるのか?
というと、やはりこれもやさしい本をたくさん読むことで改善されていきます。
やさしい本なら、和訳しなくても意味が分かる文が多いからです。
ひとつ経験から言えるコツとしては、1文読んだあと、いったん止まらずすぐに次の文に目をうつすことです。
こうすることで、脳が和訳しようとする隙を作らずにすみます。
ぜひ試してください。
興味のある本だけを読む
多読では、勉強という意識を捨てて、ストーリーを楽しんだほうが継続できます。
好きなこと、楽しいことは続けられます。
『ハリー・ポッター』にはタバコと同レベルの依存性がある、なんて言われているのをご存じでしょうか。
私もハマりまくった一人なので、これにはうなずけます。
多読のいいところは、ストーリーのおもしろさが背中を押してくれるところです。
多読は、おもしろいと思える本、興味のある本だけを、楽しんでいればいいんです。
勉強っぽくないですね。
訳さなくていいとか、興味のある本だけでいいとか。
それが多読のいいところです。
だから、おもしろくなければさっさとやめて次の本にいっちゃいましょう。
えっ、やめちゃっていいんですか?
はい、多読に根性論は不要です。
本は一生かけても読みきれないほどあります。
おもしろくない本や難しすぎる本は、がんばって読んだところであまり頭に入らないでしょう。
多読が嫌になったら本末転倒。無理はNGです!
ちなみに、買った本を途中で投げ出すのはもったいないと思うかもしれませんが、サブスクを利用すると何も気にせず別の本に交換できます。
まとめ
この記事では、失敗しない洋書の選び方と読み方について解説しました。
多読初心者が陥りがちな2つの失敗要因は次の2つ。
- 本の選び方を間違えている
- 本の読み方を間違えている
失敗しない洋書の選び方は、
レベルに合った本を選ぶ
・ペーパーバックは難易度が高すぎ
・絵本などのやさしい本がおすすめ
ステップアップはゆっくり
・レベル別読みものを利用する
・本選びのガイドを利用する
失敗しない洋書の読み方は、
精読をしない
・ザックリ読みをする
・和訳をしない
・興味のある本だけを読む
これだけで、成功確率はグッとあがるはずです。
ぜひ一緒に多読を楽しみながら、使える英語力を身につけましょう!
Happy Reading!