このブログでは、英語の本をたくさん読んで英語力をアップする洋書多読をおすすめしています。
多読は時間がかかるイメージがあるかもしれませんが、難しい文法問題を解いたり、一生使うことのないような単語を丸暗記するよりも、ずっと早く使える英語を手に入れることができます。
この記事では、洋書多読のやり方や効果について、「洋書多読」という言葉をはじめて聞いた人にも分かりやすいように解説しています。
洋書多読とは?
洋書多読とは、簡単に言うと英語の本をたくさん読むことです。
でも、本ならなんでも良いわけではありません。
洋書と聞くと、本屋さんの洋書コーナーにあるペーパーバックをイメージされるかもしれませんが、多読初心者がペーパーバックを読むのは、登山初心者がいきなり世界最高峰の山に登るくらい無謀な挑戦です。
まずは、気軽にハイキングに行くような山からスタートし、徐々に難易度を上げていくのが王道です。
では、具体的にどのような本からスタートするのが良いかと言うと、辞書を使わなくても分るようなやさしい本、つまり絵本などのやさしい英語で書かれた本です。
やさしい本をジャバジャバ浴びるように大量に読んでいると、だんだん分かる単語が増え、英語のリズムやパターンにも体が慣れてきます。
多少分からないところがあっても気にせずザックリ読みを続けることで、几帳面に日本語に訳すクセがなくなり、頭の中で英語を英語のまま処理できるようになっていきます。
そうなれば、あとは本のレベルを上げていくだけで、どんどん英語力がついていきます。
これは、人が言葉を覚えるときの自然なプロセスに沿った読書法です。
日本語も大量にインプットすることで、自然に覚えてきたはずです。
このプロセスを成功させるためには、読書を楽しみ、多読を長続きさせることが何よりも重要です。
自分が興味を持てる本を選んで、楽しみながら大量の英語に触れる。
これが、多読です。
精読との違いは?
多読に対し、精読という読書法があります。
精読は、単語の意味や文法、文の構造などを学びながら、1文1文をていねいに読む方法です。
精読の目的は、英文の正確な意味や構造を理解することです。
分からない単語や文法はそのままにせず、調べながら読み進めます。
英語の授業でやっている英文読解が、精読です。
読書法 | 目的 |
---|---|
多読 | 英語を大量にインプットし、英文に慣れること |
精読 | 英文の正確な意味や構造を理解すること |
多読と精読のメリットとデメリット
多読にも精読にも、それぞれメリットとデメリットがあります。
多読のメリットとデメリット
多読では、自分が興味のある本を選んで読むので、楽しいということがまず最大のメリットです。
文法の勉強や、単語の丸暗記といった、苦痛をともなう学習をしなくても英語力がアップするのもうれしいポイントです。
また、実際にネイティブが使っている英文をインプットするので、自然な英語を使えるようになります。
では、多読のデメリットはなんでしょう。
多読はやさしい本を大量に読んで、少しずつレベルを上げていくので、ある程度は時間がかかるということです。
3カ月後の留学までになんとかしたい!など、時間を最優先する場合は、他の勉強法と併用するか、別の手段を考えたほうがよいでしょう。
精読のメリットとデメリット
精読のメリットは、英語を効率良く学べるという点です。
新しいことをはじめるときは、まずルールを学ぶのがセオリーでしょう。
文法というルールを利用することで、語学を習得するのにかかる時間を短くすることができます。
では、精読のデメリットはなんでしょう。
「英語を日本語に訳す勉強」とも言える精読では、英語を英語のまま理解する習慣がつきません。
文法や単語の学習に苦痛がともなうこともデメリットのひとつと言えるでしょう。
また、精読は多読にくらべて、英文のインプット量が圧倒的に不足しています。
言葉は、「公式を覚えればすぐに使える」というものではなく、トレーニングしないと使えるようにはなりません。
読書法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
多読 | 楽しい、自然な英語が身につく | ある程度時間がかかる |
精読 | 効率よく短期間で学べる | 英語を英語のまま理解する習慣がつかない、苦痛をともなう、インプット量が足りない |
洋書多読のやり方
次に、多読のやり方についてお話します。
多読は、辞書を使わなくても7割くらい理解できるようなレベルの本を読みます。
大量の英語にふれることが目的なので、ていねいに読むのではなくジャバジャバ浴びるように読みます。
AIに大量のデータを学習させる、ディープラーニングのようなイメージです。
読んでいるうちに語彙力、読解力ともに上がってくるので、少しずつレベルを上げていきます。
最終的には、趣味の本やビジネス本など、英語の勉強のためでなく、読みたい本を言語の壁を超えて読めるようになるところを目指します。
これが基本的なやり方ですが、効果を上げるためのポイントをいくつかご紹介しますね。
多読三原則とは
まず、効果的に洋書多読をすすめていくうえで、とても参考になる「多読三原則」というルールがあります。
- 辞書は引かない
- わからないところは飛ばす
- 合わないと思ったら投げる
私は、こちらの本で「多読三原則」を知り、多読の習慣化に成功しました。
※こちらの本は、Kindle Unlimited 対象外です
多読三原則は、日本語の本を読むときにはあたり前のことばかりですが、英語の本を読むときにはこの逆のことをしてしまいがちです。
つまり、辞書を引き、わからないところを調べ、途中で投げ出すのはよくないと意地になってしまいます。
学校の英語の授業で、そうしてきたからですね。
では、この三原則がなぜ多読をすすめるうえで効果的なのでしょう。
私は、こんなふうに解釈して実践してきました。
辞書は引かない
辞書を引くと読書が中断してしまい、ストーリーに没頭しづらくなります。
読書スピードも落ちます。
少しでもたくさんインプットすることを優先したほうが、結果的に使える単語やフレーズを増やすことになります。
頻繁に出てくる単語は、文脈からなんとなく意味がわかるようになります。
日常会話の約95%は、わずか1,000語程度の単語で成りたっているという研究結果もあります。
あまり見かけない単語は、必要のないものと割りきっていいでしょう。
分からないところは飛ばす
多少飛ばしても、ストーリーが分からなくなることは実はほとんどありません。
日本語でも、ニュース記事や本を読むときに、かなり適当に読んでいると思います。
英語も同じです。
使用頻度の多い単語は、いつしか覚えるので心配ありません。
細かいことを気にせず、大意をつかむことを習慣化することで、会話で聞きとれない単語があったときでも、相手の言いたいことをつかめるようになります。
もし、分からないところが多すぎてストーリーが分からない場合は、もう少し本のレベルを下げてみると良いでしょう。
合わないと思ったら投げる
多読は、楽しむことを優先してたくさん読む読書法です。
つまり、楽しく読めない本は、多読には不向きです。
ストーリーが面白くない場合は、別の本に替えればOK。
難しすぎるならレベルを下げればOKです。
楽しくないのに無理をして続けていると、多読がいやになって挫折してしまいます。
洋書多読で心がけるポイント
洋書多読で心がけるポイントは、多読三原則の他にも
- 日本語に訳さない
- 英語の語順どおりに読む(返り読みをしない)
- 100%理解を目指さない
などがあります。
でも、あまりルールにしばられ過ぎるとリラックスして楽しめないですよね。
ここに書いていることは、たくさん読んでいると自然にできるようになるので、ときどき「できているかな?」と意識するだけで大丈夫です。
とにかくまずは、本を読んでみる。
そして、勉強と思わず、どんなことが書かれてあるんだろう、とワクワクしながらストーリーを楽しんでみましょう。
一番大事なことは、楽しむことです。
洋書の選び方
洋書多読は、ネイティブの小さな子どもたちが読むような、とてもやさしい本からスタートします。
おすすめは、絵本です。
なぜなら、絵が英文の理解を助けてくれるからです。
絵本で多読に慣れてきたら、文字がメインの短いストーリーに移行するとよいでしょう。
少しずつ1冊あたりの量やレベルを上げていくことで、読める本が増えてきます。
少しずつレベルを上げていくことができる本としては、
- 英語学習者用のレベル別読み物「Greaded Readers」
- 英語圏の子ども向けの読み物「Leveled Readers」
などがあります。
「Greaded Readers」や「Leveled Readers」を利用する場合は、さきほどご紹介したこの本におすすめの本がたくさん紹介されているので、参考にしてくださいね。
これ1冊あれば、本選びに困ることはないと思います。
ただ、「Greaded Readers」や「Leveled Readers」は多読用の本としてはとても理想的ですが、購入するとそれなりにコストがかかります。
1冊500~1,000円の本を100冊購入すると、5万円~10万円。
やさしい本は文字数が少ないので、100冊では100万語には到底足りません。
この後お話しますが、100万語は英語を英語のまま理解できる基礎を作るのに必要な読書量と言われています。
だんだん1冊あたりの文字数が増えてくることを考慮しても、200冊くらいは想定しておきたいところ。
10万~20万円の本代を高いと感じるか安いと感じるかは人それぞれですが、コストが気になる人は少なくないと思います。
でも、洋書多読は英語をジャバジャバ浴びるようにたくさん読むことが重要なので、本の数を妥協してほしくありません。
そこで、このブログでは Amazon が提供するサブスクリプションサービス Kindle Unlimited(月額980円)を利用した洋書多読をおすすめしています。
というのも、私自身が Kindle Unlimited でお得に多読を続けていて、たくさんの素晴らしい本に出会ってきたからです。
絵本からスタートし、文字数の少ないやさしいストーリーを経て、チャプターブックという子ども向けの小説に移行できるよう、レベル別にたくさんの本を紹介しています。
さらに、それでも一歩踏み出せない人のために、和訳付きの英語の本もたくさん紹介しています。
1,000冊以上読んできた中から、大人の多読におすすめの本を厳選していますので、ぜひラインナップをゆっくり見ていってくださいね。
読みたい本が見つからない場合
本の種類は、好きなジャンル、興味のある内容のものが一番ですが、多読初期に読むやさしい本の中には、なかなか好みのものがないですよね。
ある程度読む力がつくまでは、これはしかたがありません。
そんなときには、少し視点を変えてみましょう。
「児童書 = 大人が読んでもつまらない」と思うのは、もったいないです。
児童書には、ネイティブの生活が描かれています。
家の中、幼稚園や学校、地域でどんなことが行われているのかを知ることができます。
ホームステイしているような疑似体験ができるのです。
いやいや、虫や動物しか出てこなかったよ・・・、という場合もあるでしょう。
そんなときでも、ネイティブの子どもたちはこういう本を読んでもらってるんだな、と知ることができます。
原体験を共有していると思うと、ちょっとおもしろいと思いませんか。
子どもたちに読んできかせる本には、ネイティブが大切にしている思いがあらわれているので、1冊の絵本からでも得られるものはたくさんあります。
また、日本にはないモノや発想が描かれていることもあります。
たとえば、欧米の子どもたちは、幼児期から両親とはべつべつの部屋で寝ます。
それが長い間受け継がれてきた文化とはいえ、子どもたちはやっぱり心細いんです。
だから、児童書にはよくベッドの下に住んでいるモンスターが登場します。
暗い部屋で心細くなった子どもたちが、ベッドの下にモンスターがいるのではないかとついつい考えてしまうんです。
これは、日本の子どもにはない発想ですよね。
そういった異文化体験を、ぜひ楽しんでください。
レベルが上がってくれば、おもしろい!と思える本に出会えるようになってきます。
そうなれば、好きなジャンル、興味のある内容の本を思う存分楽しみましょう。
こちらの記事も参考にしてくださいね。
洋書多読の効果について
4技能における効果
多読と聞くと、リーディング力アップのためのもの、と思われますよね。
もちろんそうですが、実はそれだけではありません。
多読をしていると会話がたくさん出てくるので、英会話力もアップします。
つまりスピーキングにおいても効果が期待できます。
まだまだ続きがあります。
リスニングが苦手な人は、英語の「音」に慣れていないことが原因のひとつですが、そもそも英文に慣れていない、英語の処理速度が遅い、というのも大きな原因のひとつです。
多読を続けていると、英文に慣れ、読む速度も上がってきます。
これは、英語の処理速度が上がっているということなので、リスニングにも大きな効果があります。
残るライティングについてはどうでしょう。
たくさんインプットをするとアウトプットが上手になる、というのは言わずもがなです。
よく読書をする人が文章が上手いのは、どの言語でも同じです。
つまり、このように洋書多読は、読む、聞く、話す、書く、の4技能において効果が期待できるのです。
効果が出るまでの期間
どのくらいの期間で効果が出るのか?というのも気になるところですよね。
でも、ごめんなさい。
残念ながら、スタート時の英語力や、毎日どれだけの時間を割けるかによって大きな差がでるので、期間について言及することはできません。
ただ、洋書多読では、『〇カ月で英語がペラペラ』のような、短期間での大きな効果は期待しないほうがよいでしょう。
多読は量が重要なので、ある程度時間がかかります。
でも、どうでしょう。
ワラでできた家よりも、時間がかかってもレンガを積み上げて作った家に住みたくありませんか?
そもそも、語学の習得にはそれなりの時間がかかります。
実は、海外留学でさえも、半年~1年程度ではなかなか思うように上達しません。
洋書多読は、すき間時間にサクッと眺めるように読むだけでも、1年も続ければ大きな違いが出ます。
絵本からスタートした人は、短い小説くらいは軽く読めるようになっているでしょう。
たとえペラペラにはなっていなくても、1年前より英語力アップできているって、すごいことではないでしょうか。
少しずつでも確実に積み重ねていれば、1年後、2年後にはまったく違う景色が見えていることでしょう。
効果が出るまでの読書量
多読をする人たちの間では、100万語を達成することが最初の大きな目標とされています。
語数は、”a lot of easy books“なら 5ワードとカウントします。
100万語というのは、英語を英語のまま理解できる基礎を作るのに必要な読書量と言われています。
確かに、体験してみた実感としても、それくらい読むとかなり英語を読むのが楽になっていました。
ご参考までに、このブログで紹介している絵本、ショートストーリー、チャプターブックの1冊あたりの語数は、これくらいです。
本の種類 | 1冊あたりの語数 |
---|---|
絵本 | 約100~2,000ワード |
ショートストーリー | 約1,000~10,000ワード |
チャプターブック | 約1,000~30,000ワード |
このブログで紹介している本の半分くらいを読破していただくと、100万語を達成することができます。
途方もない量のように感じられるかもしれませんが、「多読三原則」を提唱しているSSS英語学習法研究会によると、
分速100語の読書速度で読んでも、160時間で100万語。
1日30分の読書時間が確保できれば、誰でも1年間で達成できる。
とのことです。
ちなみに、「分速100語」の100語とはこれくらいです。
a lot of easy books a lot of easy books a lot of easy books a lot of easy books a lot of easy books a lot of easy books a lot of easy books a lot of easy books a lot of easy books a lot of easy books a lot of easy books a lot of easy books a lot of easy books a lot of easy books a lot of easy books a lot of easy books a lot of easy books a lot of easy books a lot of easy books a lot of easy books
私は半年で100万語を達成することができました。
今は遠い目標のように感じるかもしれませんが、楽しんで続けていれば、意外とあっさり到達してしまうかもしれません。
洋書多読のおすすめポイント
最後に、洋書多読をおすすめする理由を、3つのポイントに分けてお伝えします。
多読のメリットとデメリットのところでお話した内容とかぶる点もありますが、もう少し深掘りしてお話しますね。
楽しく英語を身につけられる
好きなストーリーや興味のあるテーマの本を読むことで、本の内容そのものを楽しむことができます。
英語教材で、書いてある内容がおもしろくてついつい読みふける、なんてことはまずないですよね。
好きなこと、楽しいことは続けられます。
続けることができれば、次第にレベルが上がります。
レベルが上がるにつれて、夢中になれる本がどんどん増えてきます。
そして、最終的にはネイティブの大人向けの本が読めるようになります。
これが、洋書多読をおすすめする最大の理由です。
自然な英語に触れられる
英語教材は、単語や文法を効率的に学ぶ目的で作られているため、不自然な表現がまざっていることがあります。
例えば、有名な “This is a pen” がそうです。
日常生活のなかで、「これはペンです」と言うシチュエーションなんてあるでしょうか?
他にも私が気になるのは、”you play soccer.” “You are a teacher.” など。
「あなたはサッカーをします」「あなたは先生です」
なんて、わざわざ人から言われなくても、本人が一番分かっていることですよね。
これは文法を学ぶためには必要かもしれませんが、日常生活では使わない不自然な表現です。
これに対して、ネイティブが楽しむ目的で書かれた本は、生きた英語だらけです。
そのまま使える自然な会話や表現が身につくので、英会話力もアップします。
それどころか、会話をワンランクアップさせるおもしろい表現も身につきます。
たとえば、洋書の中で “bestest” という表現に出会ったことがあります。
bestよりもさらに良いということを表すスラングですが、こんな表現を知っていたらネイティブとの会話がはずみそうですよね。
読書習慣が身につく
英語学習は、ここまで習得したから終わり!というものではありません。
ある程度習得したら、次は使うというステージに入ります。
だって、使うために習得するのですから。
では、使えるレベルになったとき、あなたは何をしたいですか?
英語を使う仕事に転職する。
添乗員さんナシで海外旅行をする。
人それぞれ挑戦したいことがあると思いますが、ちょっと考えてみてください。
洋書多読で英語が使えるレベルにまで到達した人は、もれなく読書習慣が身についています。
ということは、英語で書かれたビジネス書や、大人向けの小説も読むことができます。
紙の本を手に入れるには費用や日数がかかりますが、今やアメリカの電子書籍市場の規模は、日本の比ではありません。
電子書籍なら、日本にいても簡単に安価で手に入れることができます。
日本にいながら、アメリカの本屋さんに並んでいる本を、和書と同じような感覚で選んで読めるということです。
洋書多読では、こんな夢のような未来が手に入る「読書習慣」が身につきます。
私は、多読のおかげで、英語で書かれた本も気軽に読むことができるようになりました。
ぜひ、この喜びを一緒に分かち合いましょう。
最期まで読んでいただき、ありがとうございました。