この記事では、これまでに1,000冊以上の洋書を読んできた経験をもとに、多読を楽しく続けるためにとくに大切だと思うポイントをまとめています。
少しでも参考にしていただけることがあれば、うれしく思います。
簡単な本を読む
多読では、簡単な本を読んだほうがいいと言われますが、どれくらい簡単な本がよいのでしょうか。
できれば辞書を使わなくても7割くらい理解できる本。
理想的なのは、日本語に訳さなくてもスラスラ読めるレベルの本です。
これまでの経験をもとに、その理由をお話します。
さっそくですが、わが家の本だなには、洋書が数十冊ならんでいます。
Kindle Unlimited で多読をする前に、何度も多読に失敗していたので、本だなに並んでいるのはその残骸たちです。
当時そのなかで完読できたのは、たったの1冊。
ヘミングウェイの『The Old Man and the Sea』だけです。
書店で手にとったときに、なぜか読めそうな気がして買ったのですが、身のほど知らずもいいところ。
あっさり挫折しました。
でも、挫折続きの自分にほとほと嫌気がさしていたので、その後、翻訳本『老人と海』を買ってきて、カンニングしながら最後まで読みました。
ほとんど意地。「楽しむ」とはほど遠い「解読」でした。
まがりなりに1冊完読できた私ですが、それを機にペーパーバックが読めるようになった、なんてことはありませんでした。
そんな私が Kindle Unlimited でなぜ多読に成功したかと言うと、びっくりするほど簡単な本からスタートしたからです。
スタートしたころによく読んでいた絵本の伝記シリーズから、少し抜粋してご紹介します。
「Mini Movers and Shakers」というシリーズから、イーロン・マスク氏の半生記の冒頭。
Hi, I’m Elon Musk.
When I was your age, I played video games.
But I also read books.
A WHOLE lot of books.
これくらい簡単なら、最後まで読めそうだと思いませんか。
本の総語数は、500ワード弱です。
ワード数を聞いてもピンとこない方のための目安として、100ワードの英文はこれくらいです。
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これに対して、ヘミングウェイの『The Old Man and the Sea』の冒頭はこちら。
He was an old man who fished alone in a skiff in the Gulf Stream and he had gone eighty-four days now without taking a fish.
ページ数は約100ページ。
SSS英語多読研究会のホームページを見ると、総語数はなんと26,602ワードだそうです。
今思えば、初心者にはハードルが高すぎます。
当時は、本のレベルが合っていないことが挫折の原因だと気がつきませんでした。
てっきり自分に根性がないのだと・・・。
でも、簡単な本ばかり読んで英語力はつくの?
心配ありません。
少しずつ本のレベルを上げていけば大丈夫です。
ゆっくりと、でも着実に英語力はついていきます。
日本人はとても勤勉で難しい文法問題も解けるのに、英会話ができない人が多いですよね。
その原因は、簡単な英語をくりかえし練習していないからなんです。
学校の英語の授業では、少し問題を解くだけで次の単元にうつってしまうので、十分な練習をする機会がありません。
日本語に訳さなくてもスラスラ読めるようなレベルの本をたくさん読むと、英語を体で覚えることができます。
さきほどの抜粋を読んでいただくとわかると思いますが、これくらい簡単だと日本語に訳す間もありません。
こういう本をたくさん読むことで、”Hello” や “Thank you” のように、考えなくても口から出てくる英語が増えてきます。
こんな本からスタートした私も、あの頃読めなかったペーパーバックを読めるようになりました。
ここまで読めるようになるとは、正直思っていませんでした。
TOEICでは高得点をとれているのに会話ができない、という人もこれくらい簡単な本からスタートしてみてくださいね。
面白くない本は読むのをやめる
多読が他の英語学習法とおおきく違うのは、楽しめるという点だと思います。
お勉強モードにならなくても、物語を楽しんでいるだけで、英語力がついていく。
これは多読の最大の魅力だと思います。
この魅力を大いに生かすためにも、面白くない本はポイっと手放してほしいのです。
面白そうだと思って選んでも、読んでみたらつまらなかったということはよくありますよね。
一度はじめたことを途中で投げだすのは、人によっては勇気がいることかもしれませんが、我慢して読み続けると、多読そのものが嫌になってしまいます。
ちなみに、購入した本なら「せっかく買ったのだから・・・」と断ち切りがたいかもしれませんが、サブスクリプションサービスならお金も本も無駄にすることはありません。
むしろ、意地で読み続けると時間を無駄にします。
最初のほうは退屈でも、途中から面白くなったりしないの?
個人的な意見ですが、面白い本は導入部分から惹きつけられることが多いです。
1,000冊以上読んできたので、10冊くらい立て続けにポイが続く経験もしましたが、その後面白い本にたくさん出会うことができました。
そんなときもあるさ、くらいの気持ちで大丈夫だと思います。
レベルが上がるにつれて選択肢も増えて、よい出会いも増えてきます。
安心して面白くない本はポイして、とにかく続けるために楽しむことを優先してみてください。
なるべく辞書を使わない
多読は、精読と違って辞書をひかないほうがいいと言われます。
私もそう思いますが、正確にいうと最初からできていたわけではなくて、いつの間にか辞書をひかなくなりました。
100%わからなくても、物語を楽しめるようになってきたからです。
考えてみれば、日本語の文章でも、結構いいかげんな読み方をしているものです。
忙しい現代人はたいてい斜め読みして、単語ひとつひとつなんて気に留めていないですよね。
ではちょっとここで、100%理解しようとすることが、実は多読の妨げになることを、例をあげてご説明します。
なるべく客観的な視点で見ていただきたいので、あえて日本語の例文を用意しました。
「外国人が日本語の勉強をしている」と想定して読んでみてください。
「エジソン」の伝記(講談社/火の鳥伝記文庫)からの抜粋です。
ある日、列車がつよくゆれたはずみに、実験室のたなから黄りんのびんがおちてくだけてしまいました。
「いけない!」
とおもったときには、もう、白いけむりをあげてもえだしていました。黄りんは空気にふれると発火するのです。
ふみけそうとしても、たたきけそうとしても、きえるどころか、ぱあっともえひろがるばかり、エジソンはさけびました。
「火事だ! 火事だ!」
しゃしょうがかけつけ、手ばやく、バケツで水をかけてくれたので、火はきえました。
ありがたいことに、へやの内部に、すこしやけあとができただけでした。
エジソンが、働いていた列車の中でこっそり化学実験をしていて火事を起こしてしまったシーンです。
この本を読んだ外国人が、100%の理解にこだわる人だったらどうなるでしょうか。
おそらくわからない言葉はいくつかあると思います。
- 黄りん
- ぱあっと
- しゃしょう
- 手ばやく
などでしょうか。
これを片っぱしから辞書で調べながら読んでいたら、どうなるでしょう。
250ページほどある本の中の1ページ分くらいの文章です。
ものすごく辛抱強い人でない限り、きっと途中でギブアップしてしまうでしょう。
このくだりでは、エジソンが実験道具で火事を起こしたこと、すぐに火を消すことができたこと、などを読みとることができればいいわけです。
けむり、火事、バケツ、水、火はきえました、などの言葉から、大スジを読みとることはできます。
わかる言葉だけひろってストーリーを楽しんでいるだけでも、たくさんの文に触れることができます。
飛ばし読みした言葉も、多読を続けていればいずれ分かるようになってくるので心配ありません。
疲れて読むのが嫌になってしまったら、そこで終わりです。
わからない言葉が多すぎて、ストーリーがわからなくなったら?
その場合は、少しレベルを下げてみてください。
もうそれ以上下げられないレベルだったら?
それなら、文字の少ない絵本を読んでみてください。
絵が理解を助けてくれます。
絵を見ながら英文を読んでみて、「こういうことを言ってるんだろうなぁ」とながめているだけでも、英文に慣れることができます。
むしろ、最初から和訳せずに読めるので、そのほうが多読のスタートとしてはよいかもしれません。
最後にもうひとつ。
それでも、1冊1冊からもう少し多くのことを学びたい、と思われる方は、二度読みをしてみるとよいでしょう。
一度目はストーリーを追うのに必死だと思いますが、もう一度読んでみると最初よりも余裕をもって英文と向き合えます。
「こういう場合はこんな言い方をするんだな」とか「このセリフいいなぁ」とか、新しい発見があると思います。
ぜひ試してみてください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。